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読書のきろく
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週1冊、早いときは3日で1冊のペースで読んでる小説たち。
インスタグラムでは、#chocoeribooks のタグをつけて読書メモを書いています。
読書は本来、ごくごく個人的なことだけど、感想を書いて共有する楽しみもあるんだなぁと。
本好きの人と、おしゃべりには特に熱くなってしまいます。
ここ1ヶ月半で読んだ本の記録。

西加奈子 漁港の肉子ちゃん

北国の小さな漁港で暮らすその強烈な容貌から肉子と呼ばれる母と美しく賢い11歳の娘、キクりんの物語。
この本に出会えてよかった!
病院でのサッさんのセリフに揺り動かされ、何度もなぞり、泣けて泣けて仕方なかった。
どうやっても大人になっていかなきゃならない、11歳の揺れる心。
キクりんのもやもや 心の声がずんずんと響く。
上にバカがついてしまうような正直者、だまされ 馬鹿にされてもいつも笑っている。
そんな肉子ちゃんの粗野で豪快、強烈すぎるキャラクターがいつの間にか 愛しく感じられてしまう。
それはキクりんの視点で語られるからこそ。
悲しい予感を抱えて読んだラスト、肉子ちゃんが菩薩にみえた。



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辻村深月 朝が来る

わが子を望んでも授かれない佐都子。
抱えた命の重さを受け止められない まだ幼ないひかり。
ふたりを結び付けた新しい命と、特別養子縁組という制度。
生みの母と育ての母、ふたりの母親の生き方が対照的に描かれる。
親への反発心と背伸びしたい気持ち、無知と未熟さゆえに転落していく ひかり。
そのひかりの母親の心情も盛り込めるだろう深く重たい主題。
子供を持つということ、親になるということ、育てるということ、の難しさ。
ふたりを結ぶ存在、息子 朝斗の無垢な瞳のように光が差すラスト。少しだけほっとした。

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伊坂幸太郎 アイネクライネナハトムジーク

小さく聞こえてくる夜の音楽のように、ああ、あれがそもそもの出会いだったんだなぁって思い返し、分かるもの。
由美さんの言葉の余韻がすべての物語を優しく包むよう。
それまで時系列もばらばらに出てきた登場人物たちが、20年に渡る美奈子とボクサー学の物語を中心に、
あっ、あの人も!えっ、この人もー?と次々と繋がっていく痛快さ。
なんでもない日々の出来事、今、一緒にいる人たち、かつて、一緒にいた人たち。
みんなどこかで繋がっている、それは まるで奇跡のようなこと。

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窪美澄 さよなら、ニルヴァーナ

あの神戸の事件がモチーフ、読むのは 苦しかった。
生々しく目を背けたい場面、少年Aを美化している憤りも もちろんある。
でも知りたい、先を読みたい。
実際の事件がモチーフであってもなくても。
人間の業、見せられないほの暗い奥底、突然 巻き込まれる不条理、消えない癒えない哀しみ憎しみ…。
書くことは、表現するということは地獄への道を進むようなもの…。
窪さんに重なるような気がした。

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佐野洋子 わたしの息子はサルだった

おバカなやりとりは何とも微笑ましく。
母からしたら 謎多き男の子の愛すべき生態、純粋さや複雑さ。
育児書よりもずっと 励まされます。

洋子さんの言葉、抜粋
何でもやってくれと思う。
子供時代を充分子供として過ごしてくれたらそれでいい。
悲しいこともうれしいことも、人をうらむことも、意地の悪いことも充分やってほしい。
そして大人になった時、愛する者に、君は何を見ているのだと
他者の心に寄りそってやって欲しいと思う。

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柚木麻子 嘆きの美女

ブスにはブスの、美女には美女の苦しみがある。
容姿に構わず、引きこもり、卑屈になっていた主人公 耶居子。
美女たちの悩みサイトに匿名で否定的なコメント書き 荒し続けていた。
ひょんなことから、その美女たちと深く関わり、耶居子が心身ともにかわっていく…
ドラマをみているような物語。 
と思ったら、森三中の黒沢さん主演ですでにドラマ化されてました。知らなかったー。

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朝倉かすみ 遊佐家の四週間

美しいが貧しかった羽衣子と裕福だが冴えないみえ子。
女同士の長年に渡る紆余曲折、友情とは呼べないような歪んだ関係。
羽衣子が妻として母として、やっと手に入れた安住の場所、遊佐家。
みえ子の四週間の滞在が4人家族に様々な波紋を呼んで…。
ああ、怖かった!読後感が悪すぎるー。でも一気読みでした。

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湊かなえ 母性

自宅庭で自殺未遂する女子高生。事故か自殺か。
母の手記と娘の回想が交互に語られ、それまでの家族の背景が浮かびあがってくる。
母であること、娘であること。
互いを思っているはずの気持ちがすれ違い、わかりあえない母と娘。悲しく、もどかしい。
母性とは母親の愛情とは何か、その主題の重さがひしひしと。

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木皿泉 6粒と半分のお米

物語の力、自分の信じる力を信じる。
木皿さんの描く日常。その時は取るに足らないようにみえることも、実は奇跡みたいだと思えること。
そういうドラマや小説が好き。
エッセイは時々辛口で、ズバっと言ってくれるのもいい。

響いたコトバ、抜粋
人とつながることだけがいいことで、孤独は悪いことだと思っているなら、
それはケータイ電話のCMの見すぎである。
孤独は、私が私を見失わないための錘のようなものである。
いついかなるときも、それを切り離してはならない。

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金原ひとみ 持たざる者

震災、原発事故、移住、離婚、予期せぬわが子の死、夫の海外赴任と孤独、
義理家族との同居に伴う軋轢…。
ある時事故のように降りかかった、そのような出来事によって、
それまで自分の足で歩いていると意識せずともよかった不断の生活が、
がらがらと崩れ、押し流されるように、それからの生活(人生)というものが一変し、
『持たざる者』になった男女4人。
それぞれがその時々で逼迫し、決断を迫られ、行動した結果にまた、悩まされ…
迷いもがく描写がリアルに迫ってくる。
特に最終章、社会性のない義兄夫婦との同居生活。
主人公朱里の 募る苛立ちとやるせなさには、こちらまでギリギリと歯を噛む心持ち。

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住野よる 君の膵臓をたべたい

病院の待合室、ふたりを結びつけた『共病文庫』。そして 彼女の抱える秘密。
誰かを信頼し 信頼される喜び。
人と人の間にいるからこその、人生。それを 圧倒的な朗らかさで体現する彼女。
そして いつもひとりでいた地味なクラスメイトくん、である僕。
ふたりの会話が甘酸っぱく切ない。最後はやっぱり、泣かされた…。
君も僕も、余命を生きている。
誰も明日死なないという保証はないのだから。
by chocolat-au-choco | 2015-11-30 09:10 | 読書メモ


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