かなわない /植本一子 写真家、植本一子さんの数年に渡る日記と散文集。 読売新聞の書評で気になっていた本。 若くしてラッパーの石田さんと結婚、ほどなく娘をふたりもうける。 序盤、育児中の閉塞感、時々憎んでしまうくらい娘たちが疎ましくなる瞬間を、率直に淡々とつづる彼女。 自分の望む理想の家族、理想の母になれない苦しみ。 仕事の再開、夜の外出、開放感、家族への罪悪感、そして恋。 離婚を受け入れない夫との坦々とした日々も書く。 彼女の内面の不安定さが加速し、恋人との修羅場、夫のとの静かな対峙と息を詰めるように読んだ。 読まずにはいられない。正直に書く、自分を客観視し、表現することの凄み。 子供を愛せない、それは 自分自身を愛せていないから。 愛されなかった少女の自分が、彼女の中でざわざわと葛藤する。 母親との関係性にまつわる、安田先生との対話は、これだけで読む価値あり。 かなわない、に込められた思い。 自分も周りも傷つけることはある意味必至なのに、すごい本だと思う。圧倒されっぱなし。 Aではない君と / 薬丸岳 離婚の後、元妻と暮らしていた14歳の息子が、突然、同級生の死体遺棄の容疑者になり逮捕された。 誰の問いかけにも、かたくなに口を閉ざす翼。 本当に 同級生を殺害したのか? とりかえしがつかない罪と生きている限り続いていく贖罪、 親として罪を犯してしまった子とどうやって対峙していくのか。 年老いた父がつぶやいた 物事のよし悪しとは別に、子供がどうしてそんなことをしたのかを考えるのが親だ。 その言葉に押され、法的な付添人となり、ふたりきりの接見で息子と対峙し、 真実を受け止めようと決心する父親。 息子がたったひとりで抱えていた苦しみ、そして見放された孤独と絶望。 SOSに気がついてやれなかった親の負い目。 ぼくはあいつに心を殺されたんだ。 それでも殺しちゃいけなかったの? 心とからだと、どっちを殺したほうが悪いの? なぜ命を奪ってはならないのか。生涯かけて背負い続ける十字架。 ぼくは優斗だけじゃなくて、優斗を大切にしていた人たちの心も殺したんだね…。 図書室で暮らしたい / 辻村深月 本が好きで好きでたまらない少女時代、自らも中二病だったという思春期、 本や漫画、アニメとの出会い、そしてノートに書き溜め、友達に読んでもらった小説たち。 辻村深月という名前のエピソードや、影響された作家さんたちとの交流。 心に残る取材先でのエピソード。 それを掬い取る感性、優しいまなざし、本当に物語りフィクションを愛しているんだなぁ。 ああ、作品はもちろん人としても辻村さんという作家さんが好きだ!と強く。 働く母としての視点には共感多々。 図書館肝試し、母子手帳にできること、なりたい大人、 が特にいつまでも心に残った。 イヤシノウタ / 吉本ばなな ばななさんの言葉がやっぱり好きだ。 肩の力を抜いていいんだよ、懐かしい空気に包まれるよう。 肉親の死、お父様との想い出など。 特にとても身近に心強く感じた、二年かかった という更年期とのばななさんの向き合い方。 自分の体や心と向き合い、まぁ、いいか!と居心地良さを求め、 こんなに楽になるなんて!との先輩の言葉に、50歳のスタートもなんだか怖くなくなった。笑 彼女が一貫して伝え続けていること。 心の自由、各々が持って生まれた色を発揮して、その才能を活かせるように、自分自身を生きることの実践。 ひとりひとりの幸せと、補い合い 認めあう世の中。 そんな世の中になれば最強だ。彼女の言葉の光のかけらをこれからも受け取っていきたい。 猿の見る夢 / 桐野夏生 大手銀行から出向したアパレル会社役員59歳。 妻と息子二人、10年来の愛人も。 食えない男、薄井。名前どおりの、薄い男、軽薄そのもの。 事なかれ主義だけど、損か得かは懸命に考える。 浅はか過ぎる言動に、イライラを通り越し、男ってしょーもない!と 嘆息も越え、笑ってしまう。 誰だって、自分がかわいいに決まっている。ここまで露骨に自分に正直に生きている男も珍しい。 母の介護と死に発した妹との深い溝と確執、財産分与での揉め事などリアル! 家も家族もあるからこそ、男はひとりになりたいのだ。 そうわかったときには遅かった。本当の独居老人に成り下がる転落は致し方ないのだろう。 溜飲を下げた読者も多いのかな。 いつの間にか、家に入り込んでくる夢見占いのおばさん(長峰)は本当に不気味。 せ猿、礼なきことは してはいけないのです。 桐野さん、ドロドロもいいけど、シニカルでコミカルなこんなおじさんの物語も面白い! 旦那や父親だったら絶対耐えられないけど!(笑) 老後の資金がありません / 垣谷美雨 娘のハデ婚費用、舅の葬儀費用と、見栄を張りたい気持ちから、 老後にと貯めていた貯金が、あっという間に目減りし、不安でならないパート主婦篤子。 そのパートも切られ、なんと夫までリストラ。姑への送金回避にと、同居を宣言。 踏んだり蹴ったり。次々と襲いかかるピンチと 持つべきものはお金!突きつけられる現実。 子供の独立、老親の介護、葬儀、墓、遺産、身につまされることばかり。 どこまでも憂鬱になりそうなところを、思わぬキャラだった姑に振り回されながらも、 開き直っていく篤子にエールを送りたくなる明るいラストに、ほっ。おもしろくて一気読み。
by chocolat-au-choco
| 2016-10-30 09:46
| 読書メモ
|
by chocolat-au-choco カテゴリ
まいにち こども てづくり お気に入り おうち ごはん*おやつ おでかけ おもてなし パン教室 ○○の会 zakka☆interior shop cafe & restaurant 読書メモ cinema music flower & green cats trip (名古屋) trip(熊本) trip (大阪・京都) trip (沖縄) trip(大分) trip(日帰りドライブ) 思うコト パン お菓子 お弁当 ごはん日誌 おでかけ(長崎) おでかけ(鹿児島) おでかけ(福岡) 教会めぐり(長崎・天草) 陶芸教室 料理教室 以前の記事
フォロー中のブログ
pousse
cheer ●雑貨 j'aime c... 毎日の暮らしを楽しむ andante* uchiiro sunnyplace cechi* cherry fish ... Vichy Mints nonoka*日記 Lumiere 徒然なるままに green-drops gentèn on la... 陶房 芽 いつも いっぱい えがお おうち時間 Needle Work ... coupe-feti andante-m* 身の丈プライスインテリあん。 お家カフェごっこ nic... Sa-Ku-Ra*Mo-... きょうのできごと Shioyaka* Violetta kitchen diary +plus 5U Lily&Lune ナチュラルな暮らし Amaretti ふんわり。+ N. *sa ku ma ma... 日々と私と宝物。 chiao ringo* an*pon*mama ... 福岡おけいこサロン グ... honey&honey Needle-y Note ブログパーツ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||