カテゴリ:読書メモ( 52 )
12月の読書
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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 / 村上春樹

高校時代の男女5人組、調和のとれた美しき共同体。
二十歳の夏、突然一方的に絶縁を言い渡され愕然とするつくる。
絶望に声をなくし、死の淵に立つ。
理由を問いただすことさえできずひたすらに内省し苦しんだ年月。
沙羅との出会いで、16年前に見ようとしなかったこと、と対峙するため、
かつての親友たちに会いに行く。
人生の亡命者改め、巡礼に出たつくる。

色彩(自分らしさ)とは、人との関わり方、信じること、見なければならないもの。
どこまでも繊細で、ゆらゆらと漂うつくるの心象。
魅力的で謎多き登場人物たち。好きな文章がここかしこに。

限定された目的は人生を簡潔にする

人の心と人の心は調和だけで、結びついているのではない。
それはむしろ傷と傷によって、結びついているのだ。

悲痛な叫びを含まない静けさはなく、
血を地面に流さない赦しはなく、
痛切な喪失を通り抜けない受容はない。

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by chocolat-au-choco | 2016-12-18 21:03 | 読書メモ | Comments(0)
11月の読書②
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すみなれたからだで / 窪美澄

生きていく哀しさ、求めて止まない衝動、自分でも名前がつけられない感情。
ぞくぞくするような背徳感に身を浸す乱暴な愛の始まり、
娘の若さにまぶしさを感じる複雑な女心、過ぎ去った濃い時間を糧に生きる老婆の人生の終わり。
時代を経て続く、さまざまな生と性を描く短編集。
並んだタイトルだけでも心惹かれる。
表題作、すみなれたからだで。
もうすっかり馴染んだと思っていた、その体の中でうごめく 複雑な想い。
時を経た夫婦の情愛が沁みた。
ねっとりと まとわりつくような女の情念や執着が描かれる短編集の中で、
年上の女性に抱く淡い恋心、青年の夏の数日を書いた、美しい1編が風穴をあけるよう。

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by chocolat-au-choco | 2016-11-30 13:47 | 読書メモ | Comments(0)
11月の読書①
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大きな鳥にさらわれないよう / 川上弘美

何万年も先の人間たちの物語は、ふわふわと漂うような、優しいおとぎ話のように進んでいく。
わたしたち人類の未来、その後の物語。憎しみや争いのない、静かな世界。
母、大きい母、見守り、そして何代も続く あなたとわたし。
懐かしいような、寂しいような、哀しいのに美しい。
後半で明かされる、わたしたち人類のその後。
ああ、そうだったのか。
人工知能、人工生殖、クローン技術、遺伝子、合成、原子の震え。
生命とは何なのだろう。人類の破滅を描きながらも、その進化にまた戻って行く。
無限のループ、神話のような物語。

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by chocolat-au-choco | 2016-11-16 13:37 | 読書メモ | Comments(0)
10月の読書②
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かなわない /植本一子

写真家、植本一子さんの数年に渡る日記と散文集。
読売新聞の書評で気になっていた本。

若くしてラッパーの石田さんと結婚、ほどなく娘をふたりもうける。
序盤、育児中の閉塞感、時々憎んでしまうくらい娘たちが疎ましくなる瞬間を、率直に淡々とつづる彼女。
自分の望む理想の家族、理想の母になれない苦しみ。

仕事の再開、夜の外出、開放感、家族への罪悪感、そして恋。
離婚を受け入れない夫との坦々とした日々も書く。
彼女の内面の不安定さが加速し、恋人との修羅場、夫のとの静かな対峙と息を詰めるように読んだ。

読まずにはいられない。正直に書く、自分を客観視し、表現することの凄み。
子供を愛せない、それは 自分自身を愛せていないから。
愛されなかった少女の自分が、彼女の中でざわざわと葛藤する。
母親との関係性にまつわる、安田先生との対話は、これだけで読む価値あり。
かなわない、に込められた思い。
自分も周りも傷つけることはある意味必至なのに、すごい本だと思う。圧倒されっぱなし。

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by chocolat-au-choco | 2016-10-30 09:46 | 読書メモ | Comments(0)
10月の読書①
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暗幕のゲルニカ / 原田マハ

ピカソの大作、反戦のシンボル『ゲルニカ』
この作品が描かれた時代背景。
大戦前、ナチスドイツが暗躍するヨーロッパの不穏な空気、
ゲルニカ空爆の悲惨さとピカソの怒り。
製作の現場、その後の移転保管、返還の経緯など。
ゲルニカにまつわる史実とノンフィクションがうまく絡み合い、臨場感があった。
特にドラ・マールの視点、男として、創造主として芸術家 人間ピカソを愛した
ドラの心理描写に引き込まれた。

芸術は飾りではない。
敵に立ち向かうための武器なのだ。
ゲルニカに込められたメッセージ。

911後のニューヨーク、MoMAのキュレーター瑶子が
無差別テロ、その報復の戦争、暴力の連鎖を断ち切りたい、その一心で企画した展覧会。
ゲルニカ展示に奔走する!
現代のニューヨークと、大戦前のパリが交錯する物語。

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by chocolat-au-choco | 2016-10-18 11:49 | 読書メモ | Comments(0)
9月の読書
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橋を渡る / 吉田修一

2014年、東京で暮らす3人の男女。
うそ、ごまかし、裏切り、不倫や不正。
大なり小なり、人生には様々なつまずきや誘惑があって、
その橋を渡るか渡らないか、迷いながらもどちらかを選ぶ登場人物たち。

最終章は70年後の未来。
これまでの登場人物に起きた出来事、その時々の選択、
そしてその子孫たちの今が複雑に絡み合い、SF要素も盛り込んだ大団円のラストへ。
えーっ、こんなふうにつながるのーと、しばらく放心状態で、
また最初からパラパラといったりきたりしながら読了。

正しい奴は例え自分が間違った事をしても、それを正しいと思い込む。
正しさというのは傲慢だ。
未来はユートピアかディストピアか。

最終章の凛と響の物語だけで、1冊の小説になりそう。
わたしを離さないで、を思い出しました。
作品によって、ガラッとかわるからすごい。個人的には、横道世之介が大好き。

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by chocolat-au-choco | 2016-09-27 13:01 | 読書メモ | Comments(0)
8月の読書
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向田理髪店 / 奥田英朗

北海道、過疎の進む元炭鉱町。
町に2軒だけになってしまった理髪店を営む、50代の康彦の目線で語られる
小さな町で起こる悲喜こもごも。
心配性だが、思慮深く口が固い康彦のもとには、深刻さは大なり小なり、
様々な町の人々の相談がもちかけられる。
狭い町ならではの人間関係の濃さ。
うまくいかない時には、それが閉塞感となることも。
しかし 町民同士の団結力は強く、互いを労る親い関係に救われることもたくさんある。
就職難、高齢少子、後継者不足、問題山積の過疎の町。
それをユーモアを交えたあたたかい目線で描くさすがの奥田節。
すいすい読めて、1本の映画を観たよう。

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by chocolat-au-choco | 2016-08-31 09:21 | 読書メモ | Comments(0)
読書メモ
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また、同じ夢を見ていた / 住野よる

表紙のまんま、ちょっと背伸びした小学生の女の子、
賢く冷静で、周りはお馬鹿さんばかり、と優越感を持っているけれど、寂しい気持ちも抱えている。
人生とは○○みたいなもの、が口癖。
幸せとは何か、大好きな担任 ひとみ先生からの課題に全力で取り組む奈ノ花。
学校の外で出会った わたしだけの友達、それはそれは 素敵な大人たち。
彼女たちと過ごす時間の中で、かけがえのない、
幸せのこたえに近づいていく過程が、きらきらと宝石のような言葉で綴られる。

心に留めておきたいセリフがそこかしこに。
すべての人が、自分らしく歩んでいくために大切なもの、そのヒントになる優しい物語。

人生とは、給食みたいなもの。
好きなものがない時でも、それなりに楽しまなくちゃ。

人生とは、自分で書いた物語だ。
推敲と添削、自分次第で、ハッピーエンドに書きかえられる。

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by chocolat-au-choco | 2016-08-18 19:54 | 読書メモ | Comments(0)
読書メモ
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アカガミ / 窪美澄

若者の自殺率増加、結婚出産離れ対策として、秘密裏に始まった政策『アカガミ』。
徹底的な身体測定や分析を経て、男女をカップリング、
塀で囲まれた『団地』に住まわせ、妊娠出産には、国が万全のサポートをする。
そんなアカガミに志願し、『つがい』となったサツキとミツキ。
ぎこちない会話、少しずつ縮まる距離、好き、という感情の芽生えと戸惑い、
『まぐわい』への抵抗と挑戦。
ふたりの男女の丁寧なやりとりと、アカガミの謎、国に囲われている圧迫感の対比。
妊娠出産後、ふたりに待ち受けていた運命の唐突さと残酷さ。
舞台は2030年。小説の中のサツキとミツキはまさにわがムスコ世代。
とにかく考えさせられる。
次世代の若者たちの恋愛結婚観の変化、少子高齢化はまさに現代の実情で政策が求められているのは事実。
荒唐無稽ではないと思える、ひたひたとくる怖さがあった。

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by chocolat-au-choco | 2016-07-07 18:06 | 読書メモ | Comments(0)
読書のきろく
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松竹梅 / 戌井昭人

松岡、竹村、梅田。 小学5年、悪ガキ3人組、名付けて松竹梅!
渡り廊下でのチンチロリン、駄菓子屋のチェリオ、鼻くそしょんべん。
バカだなぁと笑っちゃう。笑っちゃうけど、涙が出る。
端からみたら、複雑で過酷な家庭環境にいるこの3人。
でも周りの大人がなんとも魅力的。ダメダメでもちゃんと愛がある。
大人だって弱くて情けない。それを曇っていない瞳でただみつめる3人。
ジャッジなんてしない する必要はない。
がむしゃらでまっすぐ、バカで純粋、分からなくても受け入れる、
その順応力と、自分で切り開いていく力。
こどもって、たくましい。
この悪ガキ3人とも、ぎゅーーっと抱きしめたくなる。元気と勇気をもらえる物語。

おれは、まだ、なんにも満足なんかしてねえし、心のお腹も空きっぱなしなんだ。
たから、やるしかねえんだ。

でもガキでも、できることは、たくさんあるぞ。

高山なおみさんのエッセイから、初読みだった 戌井昭人さん。
大好きな1冊が増えました。

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by chocolat-au-choco | 2016-07-01 12:23 | 読書メモ | Comments(0)