10月の読書①
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暗幕のゲルニカ / 原田マハ

ピカソの大作、反戦のシンボル『ゲルニカ』
この作品が描かれた時代背景。
大戦前、ナチスドイツが暗躍するヨーロッパの不穏な空気、
ゲルニカ空爆の悲惨さとピカソの怒り。
製作の現場、その後の移転保管、返還の経緯など。
ゲルニカにまつわる史実とノンフィクションがうまく絡み合い、臨場感があった。
特にドラ・マールの視点、男として、創造主として芸術家 人間ピカソを愛した
ドラの心理描写に引き込まれた。

芸術は飾りではない。
敵に立ち向かうための武器なのだ。
ゲルニカに込められたメッセージ。

911後のニューヨーク、MoMAのキュレーター瑶子が
無差別テロ、その報復の戦争、暴力の連鎖を断ち切りたい、その一心で企画した展覧会。
ゲルニカ展示に奔走する!
現代のニューヨークと、大戦前のパリが交錯する物語。



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ジニのパズル / 雀実 チェシル

日本の小学校から朝鮮学校に入学した在日コリアンの少女ジニ。
日本語しか話せないジニは、朝鮮学校に馴染めず疎外感を強め、
教室に掲げられた金親子の肖像画に違和感を抱く。
テポドンが発射された日、ジニが背負わされた耐え難い恐怖と屈辱、そして沸き上がる怒り。

日本にいて、差別されること。同胞といわれる人といても、やはり確固たる居場所は見出だせない。
在日コリアンのアイデンティティとは?
日本、韓国、北朝鮮、民族、言語、国家。
分からない、知らない、知らされないことが多すぎる。
ジニの抱える矛盾と欺瞞、答えをくれる大人はいない。
ジニの 無力な少女の『革命』、孤独な戦い、見えない敵。
真っ直ぐに向き合うも、打ちひしがれるしかなかったジニ。
ジニの剥き出しの叫びに、胸が苦しくなった。たくさんの人に読んでほしい。

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ねこのおうち / 柳美里

容姿が気に入らないからと、公園に捨てられた一匹の猫と独り暮らしの老女との出会い。
優しいおばあさんとニーコに流れる幸福な時間、そして突然の別れ。
人間の身勝手さ、残酷さに茫然とする第1章。心を鷲掴みにされた。

ニーコが産み落とした6匹の子猫、その猫たちに出会う人々の物語。
それぞれの事情を抱え、生きづらさに寂しさ、哀しみ やるせなさに立ち止まる人たち。
そっとそばに寄り添う猫。
現実は、この世の中は、猫にもそして人間にも決して甘くはない。
しかしながら ひとときのぬくもりに、その暖かな存在に救われることもある。
命の哀しさと尊さ、素晴らしい1冊。これからの 柳美里さんが楽しみです。装丁も好き!

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流 / 東山彰良

1970年代から80年代にかけて、台湾で生きる秋夫(チョウシェン)の青春や友情、恋愛を軸に、
中国の分裂や抗日戦争の歴史を踏まえた、スケールの大きな物語。

面々と受け継がれる一族の歴史と絆。
亡羊とした大陸の風、血なまぐささ、野放図さ、混沌。
圧倒的なエネルギーと疾走感。食べて寝て、とにもかくにも明日へつなげる。
意味とか意義とか善悪を超えた、ただただ生きる、生への執着。
秋夫の友情、切なすぎる叶わなかった恋。
後半、祖父の死の真相を追い、秋夫が自分のルーツを求め、大陸へと乗り込んでいく頃には、
ページを繰る手が止まらなかった。
近代日本が 中国や台湾に対して何をしてきたのか、学ばなければ。

どうしようもないことはどうしようもない、わからないものはわからない、解決できない問題は解決できない。
それでもじっと我慢をしていれば、その出来事はいずれわたしたちのなかで
痛みを抜き取られ、修復不能のままうずもれていく。そしてわたしたちを守る翡翠となる。
by chocolat-au-choco | 2016-10-18 11:49 | 読書メモ


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