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12月の読書
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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 / 村上春樹

高校時代の男女5人組、調和のとれた美しき共同体。
二十歳の夏、突然一方的に絶縁を言い渡され愕然とするつくる。
絶望に声をなくし、死の淵に立つ。
理由を問いただすことさえできずひたすらに内省し苦しんだ年月。
沙羅との出会いで、16年前に見ようとしなかったこと、と対峙するため、
かつての親友たちに会いに行く。
人生の亡命者改め、巡礼に出たつくる。

色彩(自分らしさ)とは、人との関わり方、信じること、見なければならないもの。
どこまでも繊細で、ゆらゆらと漂うつくるの心象。
魅力的で謎多き登場人物たち。好きな文章がここかしこに。

限定された目的は人生を簡潔にする

人の心と人の心は調和だけで、結びついているのではない。
それはむしろ傷と傷によって、結びついているのだ。

悲痛な叫びを含まない静けさはなく、
血を地面に流さない赦しはなく、
痛切な喪失を通り抜けない受容はない。




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世界一ありふれた答え /谷川直子

傷つき一歩も先に進めなくなり、精神科の門をくぐった男と女。
夫に捨てられた、承認欲求が強すぎるまゆこと、
右手が動かなくなったピアニスト、トキオの出会い。
互いに寄りかかり、自問自答を重ねては、死の淵を漂う。
闇夜に響く拙いアラベスク。
まゆこがたどり着いた、世界一ありふれた答えとは。
夜明け前の美しい青、そんな優しいラスト。

世界は私を必要としていない。
世界は誰も必要としていないのだ。
なんという大きくてあたたかな拒絶。

ある意味、私は他者であり、他者は私なのだ。
だからこは愛しく思えて共感できる。

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あひる / 今村夏子

ある日、貰われてきたあひる。
のりたま、と呼びかわいがる夫婦。
のりたま目当てに集まってくる子供たちとの賑やかな時間。

なんだろう、平易な文章で淡々と進んでいくのにやめられない。
悪い予感を胸にページをめくり、ほっとしたりじりじりしたり。
うまく言い表せない、日常に潜むざわざわや もやもや、心をひっかかれるような感覚。
それをこんな風に小説にできるなんて。もっと読みたい。
by chocolat-au-choco | 2016-12-18 21:03 | 読書メモ


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